研究課題
海外在留邦人の母国観やその構築に係るコミュニティ内のコミュニケーション環境を、在外選挙への参加および選挙関連情報入手という行動指標から捉えることを目指し、さらにホスト社会の影響を考慮するため複数の地域の邦人コミュニティからデータを収集、比較分析するのが本研究の目的である。具体的内容平成21(2009)年度に、イギリスおよびシンガポール在住邦人を対象に聞き取り調査および質問票によるオンライン調査を行った。前年度実施の豪州での調査同様、(1)在外選挙人名簿への登録・在外選挙への参加、(2)その意思決定に影響を及ぼした情報の入手経路(メディア)、(3)職場や友人を通じたホスト社会との接触程度、を調査項目としたが、聞き取り調査では回答者のストーリーを尊重し半構造化インタビュー形式を採用した。また各地領事(ロンドン、エジンバラ、シンガポール)や現地邦字メディア編集者へ、選挙情報の提供の仕方について聞き取り調査を実施した。領事やメディア編集者は、●コミュニティの性格や情報環境を考慮し情報提供戦略を選定している一方で、在留邦人への調査では、●選挙関連情報の入手は日本発メディアに依存●政治不参加の理由として、生活の基盤が日本にないことから意味が見いだせないという場合の他、海外に在住する感覚が薄く国民としての自覚が曖昧なままである場合も見られることが明らかになった。意義・重要性集団(国家)と自己の関係をどう捉えるのか、世界観を規定する社会ネットワークをどう構築するか、という点において、滞在環境によって影響を受けることが明らかになった。文脈に従って自己を変容させ対応する特性が抽出され、従来から指摘される特性が広汎な現象の根本を握る基本的民族性であることが確認出来た。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
The International Journal of Diversity in Organisations, Communities & Nations 9(5)
ページ: 125-134