本研究は、土地供給弾力性および消費選択特性が資産クラスの価格相関、資産選択、およびリスク・プレミアムにおよぼす影響について研究を進めることを目的としている。 当該年度においては、国際会議での研究発表を積極的に行い、各国研究者との討論、交流を深めた。全部で9件の研究発表を行った。特に、ドイツでドイツ連銀及びCentre for European Economic Researchにより開催された"International Conference: What Drives Asset and Housing Markets?"、香港で国際決済銀行(BIS)とHong Kong Institute for Monetary Resarch (香港金融管理局の研究機関)により開催された"Conference on Property Markets and Finance"、中国でAsian ReaI Estate Societyにより開催された学会、横浜でAsian Finance Associationにより開催された学会、東京で政策研究大学院大学により開催された"2008 International Conference of Economic Growth"においては、当該研究に対して高い評価を受けるとともに、極めて有益な議論を行うことができた。特に、Asian Real Estate Societyの大会では"Selected Paper Award" を得た。またこれらの国際会議に合わせて、各国の不動産価格および土地供給弾力性のデータ収集を行った。 さらに、査読付論文を2編、査読なし論文を3編公表し、書籍の一章執筆を担当した。うち、国際学術誌であるInternational Real Estate Reviewに掲載された論文では、商業用不動産の価格及び供給量のマクロ特性を実証的に明らかにした。季刊住宅土地経済では、住宅価格の特性の基礎条件を理論的に検討した。書籍においては、不動産の価格と収益率に関して、環境や社会的責任に着目した場合の特性について、理論的及び実証的な研究を行った。また、論文一編を国際学術誌へ投稿した。 また、理論研究及び実証研究をさらに深化させており、そのために必要なコンピュータ、ソフトウェア、記憶装置、参考図書、データベース等を購入した。具体的には、非対称の資本調整費用の導入、数値解析及びカリブレーションによる定量分析、先進国の株価及び住宅価格データの精査、家計の資産保有・住宅賃料・賃金・土地利用規制等のデータ収集のための作業である。
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