本研究では、情報通信技術の利用が社会生活に対して与える影響について、マルチレベル分析の手法を用いることで、マクロレベルの情報通信技術の普及状況の要因を加味したミクロレベルの分析を行うことで、マクロ、ミクロの両側面を考慮した知見を提出することを試みた。平成21年は平成20年度の研究の成果をもとに、研究課題に取り組んだ。まず、各都道府県における人口、人口密度、インターネット普及率などのマクロレベルの変数と、インターネット利用時間、電子メール利用量、インターネットからの情報取得行動などの個人の情報通信技術利用行動に関する変数の関係を分析した。分析の結果、パソコンを通じたインターネットの都道府県レベルの普及率に関しては、ウェブの閲覧時間やインターネットからの情報取得行動を促進させる傾向がある一方で、携帯電話を通じたインターネットの都道府県レベルの普及率に関しては、携帯メール利用量を増加させる傾向があるという結果が得られた。また、インターネット利用と都道府県レベルのインターネット普及率、個人の心理的変数の関係を検討した結果、携帯電話を通じたインターネット利用が普及した地域では携帯メール利用が私生活主義的価値観を高める可能性があることが示唆された。これらの成果は部分的に学会発表、学会誌論文を通じて公表した。また、平成20年度に行った階層的データを取り扱える統計的分析手法を検討した成果を取りまとめ、他領域においてではあるが、成果を論文として公表した。
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