本研究は、周辺的政策制度の持続メカニズムを日本の児童福祉政策を事例として、政策過程論の視座から解明することを目的としている。 平成20年度は研究計画に従い、先行研究の課題を明らかにするとともに、80年代以降の児童手当制度改正の政策過程を分析した。また、児童手当制度の政策過程の特質を明らかにする意味でも有用であると考え、他の児童福祉政策の政策過程の分析も行った。具体的には、2000年代の小泉政権下での保育制度改革である。 前者に関しては、平成21年3月26日に行政共同研究会(於:東京大学)の場で報告を行った。内容は80年代の縮減期と90年代の再生期の政策過程を言説政治に着目して比較し、この間の厚生官僚による言説戦略の変化を厚生省の組織ドメインの変容から説明したものである。 後者に関しては、『季刊行政管理研究』124号に「脱保守主義レジーム改革の言説政治-小泉政権下の保育制度改革をめぐって-」と題する論文を発表した。これは小泉政権下の保育制度改革の政策過程を言説政治の観点から分析するとともに、改革期での厚生官僚の言説戦略に見られる「先送り」の特徴を明らかにしたものである。 いずれの報告・論文も理論的には、これまでの先行研究ではほとんどなかった言説分析の手法を政策過程論に導入したこと、実証的には80年代から2000年代にかけて長期的な視点をもって各政策過程を分析したことは、重要な意義をもち、学問の発展にも寄与したものと考えられる。
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