筆者がこれまでに研究対象としてきた盲ろうに他の障害をあわせ有する子どもとの実際的な係わり合いから得られた実践資料(ビデオ映像記録)を分析し、詳細な状況記述や行動の分類を通して、共同的活動の成立・展開に関する実証的な知見について検討を重ねた。これまでの研究データの検討を行う際には、対象児への働きかけの成果を確認するために、対象児の生活の場を実際に訪れ、経過観察を行った。さらに、新たな研究フィールドの開拓にあたって、近隣の特別支援学校や施設に出入りし(頻度は、週に1回〜月に1回程度)、盲ろうに他の障害をあわせ有する児童・生徒、および成人盲ろう者に対する教育実践を開始した。研究対象児(者)に対する働きかけにおいては、共同的活動を促すために、対象児(者)の興味・関心に沿い、玩具や遊具、教材・教具(以下、玩具、遊具、教材・教具をまとめて『教材』と記す)を適宜用意した。とりわけ、視覚と聴覚を十分に利用できない盲ろう児(者)においては、触覚系を介した共同的活動が中心となるため、振動や揺れなどを楽しむ教材を使用した。また、特に個別性の高い対象児(者)においては、市販品では対応することが困難なため、自作教材や市販品を改良した教材を使用したり、あるいはそれらを用いずに身体接触を介したやりとりを行うなどして、対象児(者)からの自発的な身体の動きや発信を促した。その際には、微細かつ瞬間的な動きを捉えるために、対象児の些細なしぐさ、動作などのすべての行動に常に注意を向ける一方、働きかけの様子をビデオカメラで記録し、係わり合い直後にその映像を視聴し、対象児(者)の細かな動作にも注目し、共同的活動の成立・展開に関する諸条件について分析を重ねた。
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