研究概要 |
盲ろう児とのやりとりの間に「共同注意」を見いだす試みとして、数名の盲ろう児を対象に、対象児との共同的活動を目的とした働きかけを実行した。具体的な働きかけの場面としては、対象児との玩具や遊具を介した遊び場面、食事や衣服の着脱等の日常生活場面に介入し、これらの場面をビデオカメラで記録した。係わり手と対象児との間に生じる共同注意行動の分析(ビデオ映像分析)に際しては、筆者のこれまでの研究によって見出された「触覚的共同注意」(中村・川住,2006;中村・川住,2007)の操作的定義を用いた。得られたビデオ映像記録の分析の結果、数種の共同注意行動のパタンが見いだされるとともに、それぞれが関連してより高次の共同注意行動へと変化していることが明らかになった。また、特に係わり合いの初期の場面においては、この一連の共同注意行動の変化は、係わり手の働きかけを始発とするという特徴も明らかになった。こうした特徴は、係わり手と対象児との相互交渉が応答的な関係から双方向的な関係へと移行したことを示唆し、この関係の変化は、対象児が係わり手の振る舞いや動作を予測することによってもたらされた。さらに、先の変化を係わり手側の条件として見れば、対象児の予測行動を発現させるような働きかけが係わり手に求められていることを示唆している。その際に係わり手は、(1)共同的活動に、ある法則性(パタン)を持たせること、(2)対象児の予測行動が安定した際には、対象児の予測行動がさらに拡大するために、それまでの法則性あるいはパタン化を脱する働きかけを行うこと、これら2点を考慮した働きかけにより、共同注意行動が持続し、かつ高次化されることが明らかになった。
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