研究概要 |
平成20年度に研究成果を示すことができなかったのは,雇用・人事管理を取り巻く環境が大きく変化していることを踏まえ,調査・研究の枠組みを再構築しているからである。 非正社員の量的・質的な基幹化に彼らへの処遇の充実が伴う時,つまり,「雇用の均等化」がなされる時,彼らと自らの差異の縮小を知覚する正社員はその事象をどう受け取るか。このことが元来の問題意識であった。しかし,2008年後半以降,非正社員はもとより正社員すら雇用上のリスクを大きく知覚せざるをえない状況が生じつつある。こうした中では,「雇用の均等化」は,「非正社員の扱いが正社員並みになること」としてばかりではなく,「正社員の扱いが非正社員並みになること」としても捉えられうる。そして,このような多様性を踏まえて「雇用の均等化」の現状と帰結を明らかにするためには,企業・正社員・非正社員の間での公正なリスク・負担はどのようなものであるか,という観点を持たなければならないだろう。 「雇用の均等化」が多様な姿を示し出す中,今年度の研究では,その多様性と分布のあり方についての現状を明らかにしたい。そして,それぞれの「雇用の均等化」が,企業・正社員・非正社員の利害のバランスをどれだけ取れているかも明らかにしたい。利害のバランスを論じるにあたり,正社員や非正社員の認識枠組みに着目する必要がある点については,これまでの研究方針を引き継ぐ。現時点では先行研究の成果や現状の推移を踏まえつつ質問項目の設計を行っており,7月か8月には実際にサーベイ調査を行うことを目標としている。
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