研究概要 |
本研究で筆者が「雇用の均等化」とした(1)非正規従業員の量的基幹化,(2)非正規従業員の質的基幹化,(3)正規従業員と非正規従業員の間の均衡処遇,については,企業業績等の組織パフォーマンスとの関わりに着目した議論が少ない。この間隙を埋めるため,筆者は二次分析やアンケート調査を行い,2編の論文にまとめた。一編は「11.研究発表」に示されたもので,近日中に専門誌に査読論文として投稿予定である。他一編については「11.研究発表」の覧に記されてはいないが,すでに専門誌に投稿し,査読を受けている。 本研究で特に実証的に検討したのは,(1)「雇用の均等化」を構成する諸施策と組織パフォーマンスの関連,(2)非正規従業員の量的および質的な基幹化と正規・非正規間の均衡処遇の間の相乗的な効果,(3)正規・非正規間の均衡処遇を構成する個別施策の間の相乗的な効果,であった。詳論は割愛するが,主たる発見事実は以下の通りである。(1)「雇用の均等化」を人事管理全般で同時進行させることは組織パフォーマンスの観点から見て望ましいとは限らない,(2)正規・非正規間での処遇の均衡度の最適水準は各企業の非正規従業員の活用状況に応じて変化する,(3)「均衡処遇」という方針を人事システム内で首尾一貫させることは組織パフォーマンスを高めることにしばしばつながる。 交付書類で述べておきながら実際に検証できなかったこととして,組織レベルでの成果と正規従業員にとっての成果と非正規従業員にとっての成果の両立可能性がある。
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