本研究では、主に実証調査を基に日系企業の海外トップマネジメントの構築・継承プロセスの分析を行った。昨年度実施した理論フレームワークの検討を踏まえ、中国日系企業5社に対しての調査を実施している。調査の結果、企業の進出直後の段階では、戦略的トップマネジメントの構築を考える必要があることがわかった。日本で蓄積されたノウハウの応用を海外で事業展開する場合、日本の戦術に詳しい強力なリーダーが必要となる。しかし、海外市場を中心に新たな展開を進める場合は、現地状況に詳しい現地出身の人のリーダーシップ構築が大切である。一部の企業では現地出身の人をトップに据えて海外市場の展開を進める動きが現れているが、日本本社の判断に頼りすぎる側面もある。また、実証研究の結果としては、トップマネジメントの構築は積極的に進める企業が多いのに対して、従来蓄積された海外運営のノウハウの継承については対策をしていないところも多い。短期間の引継ぎを頼りに、先代トップ経営者が蓄積されたノウハウ、特に正式な書面に記録しにくいものに関しては、なかなか継承できていない。さらに、継承問題が解決されなければ、後任社長のリーダーシップに悪影響を与え、現地従業員の不信を招くことにも繋がるため、今後も海外トップマネジメント継承に重点を置いた一層の研究が必要である。 尚、本研究成果の一部は下記出版物に反映されている。 王英燕、2009年、「経営理念から日本企業のリーダーシップ構築・継承モデルの探索-M社と0社のケーススタディより」、修君編、『華南日本研究』、pp.431-437、中国語
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