従来の教育/教育学は、人間を取り巻くあらゆる現象を、成長発達の役に立つ手段となるか否かを基準として評価してきた。この結果現代社会は、諸々の事物だけでなく人間自身も役に立つか否かを基準として評価されるという、有用性と価値の桎梏に囚われた社会となっている。しかし、教育を含めた人間の生の営みは、このように有用性や価値に還元することのできない別な位相を含んでいる。有用性や価値の桎梏に囚われることのない、教育を含めた人間の生の「奥行き」を探求し、この「奥行き」に相応しい知の在り方を明らかにした点に、本研究の最も重要な成果がある。
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