研究課題
本年度は、少子高齢時代を迎えたわが国の公共政策、特に地方財政に注目して分析を行った。高齢人口の増加に伴い、社会保障費の増加が予想されており、どのように社会保障を提供するのかを分析することは重要である。まず、Hirota and Yunoue(2008)では、介護保険の保険者である市町村が広域行政を実施することによる歳出面への影響について分析を行った。平成の合併が一段落した現在、市町村合併以外の広域行政による効果を分析することは重要である。類似団体という分類を利用して、介護保険に関する広域行政の影響を分析したところ、一部事務組合に比べて広域連合において歳出が抑制される傾向が確認された。次に、Saito and Yunoue(2009)では、補助金改革、税源移譲と地方交付税の見直しを同時に行う「三位一体改革」による地方財政への影響についてシミュレーション分析を行った。地方交付税基準財政需要額の取り扱いや歳出削減努力の有無について、いくつかのケースに分けて分析した結果、三位一体改革によって、地方税収の格差が拡大することや、現状において補助金や地方交付税に大きく依存している地域での歳入減が大きいことが明らかとなった。本研究で得られた結果は、少子高齢時代における公共政策のあり方を議論する上で重要であるだけでなく、地方分権化の流れの中で、社会保障の一翼を担う地方財政がどのような影響を受けるかということに対して新しい視点を与えており、意義深いものである。
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Decentralization Policies in Asian Developmerit, Ch. ll. (S. Ichimura & R. Bahl ed. )
ページ: 265-280
Economics Bulletin Vol. 8(11)
ページ: 1-20