本研究では対人関係を構築することに焦点をあてたプログラムの受講による養育者と子どもとの相互作用の変化を、養育者と子どもそれぞれの特性の及ぼす影響を考慮して検討することを目的として行われた。 対人関係発達指導法の手法を取り入れたセッションを養育者に対し実施し、各セッションで宿題として養育者と子どもとのやりとりをビデオ録画してもらった。対象となったのは高機能発達障害のセッション開始時5歳4ヵ月の男児とその養育者、および6歳10ヵ月の男児とその養育者であった。なお、面接開始前には養育者特性を把握するための質問紙調査、子どもに対してはADOSを実施し、合わせて養育者と子どもの相互作用を測定できる行動観察アセスメントを行った。行動観察アセスメントに関しては非言語的コミュニケーションに焦点をあてたセッション15回終了時点にて再度同じ内容で行い、質的分析を通して養育者と子のやりとりの変化を検討した。その結果、両対象児ともにみられた変化として、面接開始前と比較して「言葉」としての反応ではなく、他者を参照するための視線、動作による提示などの増加がみられた。また、5歳4ヵ月の男児とその養育者との行動観察アセスメントにおける相互作用では、開始前では癇癪として物を投げるという動作(5秒後)がみられたのに対し、15回終了時には言葉による説明(5秒後)と適応的な代替行動として感情を表現(40秒後)といった変化がみられた。養育者の内的特性による相互作用の変化の違いはみられなかった。
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