本年度は大別2つの作業を行った。第1に太陽光発電関連技術に関するヒアリング、第2に特許データの整備である。 第1の太陽光発電は近年急激に注目度が増しつつある分野である。その中核技術である太陽電池において現在は結晶シリコンを用いた方式が主流であるが、近年では新たな技術提案が相次いでいる。太陽電池は日本企業が長期的に技術開発に取り組み世界的に先行してきたが、産業が本格的な成長期に差し掛かった段階で新興国企業が急速に競争力を強めているという点で液晶を始めとする薄型ディスプレイ分野と似ている。本研究では、筆者がこれまで研究を進めてきた薄型ディスプレイ分野との比較を目的として太陽電池の調査を行い、過去の開発事例を研究した。 第2の特許データの整備は、財団法人知的財産研究所の「IIPパテントデータベース」を用いて、上場企業が過去に出願した特許を整備した。調査対象は1982年以降の日本における上場企業(店頭公開企業を含む)全てである。具体的には、ある上場企業の名前で出願されている特許が確かにその上場企業による出願なのか(同名の他企業ではないのか)を同定した。この作業によって様々な技術分野間・企業間の特許の取得動向の違いを分析することができる。 次年度は、これに科学文献(学術雑誌の論文など)のデータベース作成を加えて、事例研究と大規模データによる検討との二つから、企業がイノベーションを成し遂げ、強い競争力を持つための、産業とサイエンスとの関わり方について、技術分野間・企業間の比較を行う。
|