研究概要 |
本年度は"A Simple Efficient Instrumental Variable Estimator in Panel AR(p) Models When Both N and T are Large"という論文の改訂と"The Effects of Dynamic Feedbacks on LS and MM Estimator Accuracy in Panel Data Models: Some Additional Results"という論文の執筆を行った。 動学的パネルモデルの操作変数推定では過去のレベルの変数を操作変数として用いることが多いが、1つ目の論文ではレベルの変数ではなく、過去の平均からの偏差を取った変数を操作変数として使うと、操作変数推定量の効率性が改善され、漸近的に効率的になることを示した。この論文は本研究のベースとなる研究成果であり、数回の改訂作業を経てEconometric Theoryに掲載されることになった。 2つ目の論文はBun and Kiviet(2006,Journal of Econometrics)が示している結果の改善方法を提案している。Bun and KivietはレベルモデルのGMM推定量の有限標本バイアスのオーダーの大きさを導出しているが、2つ目の論文はレベルモデルそのものではなく、GLSタイプの変換を行ったレベルモデルを使うと、GMM推定量の有限標本バイアスのオーダーが小さくなるという新しい理論的結果を示している。そして、シミュレーションで両モデルのGMM推定量のパフォーマンスを比較したところ、提案されたモデルをGLS変換する方法はバイアスを小さくするのに非常に効果的であることがわかった。
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