本研究の1年目である今年度(2008年9月〜2009年3月)は、中南米地域の教育改革へのより効果的な国際支援のあり方の糸口を探るべく、ボリビア・チリ・ペルーを事例として途上国の教育改革における国内外のアクター間の相互作用のメカニズムの解明することを目的として、以下の調査・研究を実施した。 (1)教育改革の政策形成・決定フェーズ、実施フェーズの双方に重要な役割を果たすアクターとして先住民運動体に注目し、ボリビアでの政策形成・決定フェーズにおける先住民運動体の動きと教育政策への影響について論文としてまとめ、2008年10月に刊行した。同じく政策形成・決定フェーズにおける政府と教員組合との対立と協調について日本比較教育学会で発表し(08年6月)、また他研究者の編著図書の1章として発表した(08年11月)。 (2)教育改革の政策形成・決定フェーズ、実施フェーズの双方に重要な役割を果たすアクターとして教員組合とキリスト教会に注目し、ボリビアにおけるそれらの行動と思想について現地調査を実施した(2009年3月)。具体的には資料収集および聞き取り調査である。この調査結果は、国際教育協力論集において論文発表する予定である(2009年10月判行予定)。 (3)ボリビアにおいては実施フェーズの成否を左右する存在としての教師に注目し、小中学校教員に対し教職や専門職意識に関する質問紙調査を実施した。この調査結果は、日本比較教育学会において発表する予定である(2009年6月予定)。 チリにおいては、ユネスコ・ラテンアメリカカリブ地域事務所に訪問し、中南米地域の教育改革、教師教育の動向について所員へ聞き取り調査および資料収集を行なった(2009年2月)。また教員組合員へ本研究への協力を依頼し、次回の質問紙調査、聞さ取り調査の基盤を作った。同ユネスコ地域事務所で得た情報に関して調査ノートとして発表する予定である。
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