本年度は昨年度に引き続き、自閉症児における自己理解に関する実験的研究及び臨床実践研究を行った。 1. 自閉症及び統制群としてダウン症幼児に対して鏡映像、反転映像、遅延映像といった各種の条件における自己像理解に関する実験研究を行った。その結果、自閉症児はダウン症児と異なり、遅延映像における自己像に強く反応することが示された。2. 自閉症幼児における模倣能力の発達についての検討を行い、その結果、自閉症児は模倣に必要な他者意図理解及び注意の焦点化が困難なため模倣課題の成績が低くなっていることが示された。3. 発達障害児における障害の自己理解の在り方を検討するため、本人に対する障害告知とカミングアウトについて調査研究を行った。その結果、障害告知は支援の必要性の有無によって左右されるというよりも、保護者の障害に対する理解などが影響することが示唆された。またカミングアウトについては、周囲の子どもからの疑問の有無によって影響することが示唆された。4. 自閉症児の感覚・認知特性を明らかにするためのアンケート調査を行った。その結果、自閉症児の感覚・認知特性については聴覚的な過敏性が最も大きいことが示唆された。5. 2次障害による不適応を示すアスペルガー障害児に対する障害理解を促すための臨床実践を行った。支援の中で、不適応感を示すアスペルガー障害児本人の内的な情動反応を受容しながら、自己決定感・自己効力感を高めていく働きかけを行っていくことが有効であると示唆された。
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