鉄道事業法・道路運送法の改正に見られる需給調整規制の廃止によって、全国各地で公共交通の存廃論議が巻き起こるようになった。とりわけ少子高齢化と人口減少のつづく地方圏では、「地方鉄道→路線バス→乗合タクシー」というように、公共交通のハコが小さくなりつつある。デマンド型タクシー、福祉有償運送/過疎地有償運送のような「非在来型サービス」が主流化しているのである。 本調査研究は、地方圏におけるコミュニティ交通の事例を取りあげ、次の4つの点から、住民と行政の協働プロセスを検討したものである。(1)公共交通の廃止をテーマとする住民運動の展開、(2)規制緩和が基礎自治体の行財政過程に与える影響、(3)コミュニティ交通の創出にむけた行政の意思決定の論理、(4)コミュニティ交通の創出にむけた地域住民の合意形成。以上を通して、ネオ・リベラリズム時代における「新しい公共」の意味を明らかにしたものである。
|