平成20年度は、まず、「社会的公正(social justice)」の達成を目指す教員養成に関する理論構築作業の一環として、先行研究となるコックラン-スミス氏やザイクナー氏らの著作物を入手し、精読を行った。当該科学研究費補助金を有効に用い、資料の収集ができたと考える。そのなかで、オルタナティブな教員資格認定制度に関する新たな研究動向が存在することを確認できた。具体的には、同制度は、従来まで大学における伝統的な教員養成と対比され、その「効果」について議論が蓄積されてきたが、そのような二者択一的な研究枠組みを超え、各学校区のニーズなどを踏まえた、「有効」な教員養成のあり方を検討すべきであるという主張がなされている。このような研究動向について、アメリカの教育制度について専門的知見を有する研究者との会合のなかで意見交換を行い、自らの知見を深めた。しかしながら、先行研究群精査の進捗状況が予定より遅れ、平成20年度内に単独の成果をまとめることができなかった。平成21年度は、継続して先行研究群を精査し、単独で学会発表を行い、その上で論文投稿という形で成果を公のものとしたい。 また、平成20年度は、渡米調査(平成21年2月15目〜25日)を行った。訪問先は、申請の通り、ババーマン財団(テキサス州ヒューストン)である。しかし、同財団事務局長との面会を当初予定していたものの、同氏が多忙のために会うことができなかった。平成21年度は、補完の意味を含めて再度渡米調査を行うことにしたい。さらに、申請の通り、ババーマンの著作物について収集を行ったが、十分に検討ができていないので、これも平成21年度の課題として行いたい。
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