最終年度(2年目)に当たる平成21年度では、まず、昨年度に引き続き「社会的公正」の達成を目指す教員養成の在り方を中心に、米国の先行研究を精査し、これらの先行研究群に影響を与えたMartin Haberman(元ウィスコンシン大学ミルウォーキー校)の教員養成論・実践について分析を行った。 明らかになったことは、特に大都市学校区のニーズに応える教員を養成するために、ARTCの導入が模索されたということである。具体的には、大学における教員養成(traditional certification)のみでは、教員候補者の多様性の確保、またカリキュラムにおいて教員候補者の教育に関する現状認識を深化すること(単に現状を肯定するのではなく、分析の上で改革を志向する態度を養うこと)などにおいて問題があると認識され、ARTCの導入が唱えられたことが明らかになった。単に規制緩和、市場主義という文脈のみならず、社会的公正の実現のために、ARTCの導入が検討されたのである。研究計画においては、当初、Habermanの教員養成論のみで論文をまとめる計画であったが、同氏を含めた数人のウィスコンシン大学ミルウォーキー校の実践の資料をまとめた上で、近日中に論文としてまとめることを期したい。 次に、上述の理論が、ARTCの法制化にいかなる影響を与えたのかについて、テキサス州を事例として調査をした。結果、同州の法制化に大きな役割を果たす「サンセット諮問委員会」の席上、教員専門職団体がARTCに対する意見を述べている議事録の存在を突き止めた。必ずしも教員専門職団体がARTCの導入に一様に反対したわけではなく、肯定も含めた様々な反応があったことが明らかになった。この成果を基に「雑誌論文」をまとめた。(約737字)
|