本研究は、地域社会教育における多文化共生支援システムの実態と課題を明確にし、多文化共生教育のあり方と可能性を日本と韓国を調査対象に検討することを目的とする。本研究は、1980年代以降に発展した多文化教育研究において、ニューカマー外国人の増加とともに、ニューカマー外国人中心の研究とオールドカマーの在日韓国・朝鮮人中心の研究とが別に行われていることから、日本の多文化教育をより総合的に捉える視点が必要と思い、日本と韓国を対象に比較研究をおこなうものである。日本だけでなく韓国の研究対象としているのは、政府による政策づくりが活発に行われ、このような多文化支援体制の整備に向けての動きが日本の多文化教育を考える上で有効だからである。 初年度である今年度は、第一に、「多文化共生」論や多文化教育をめぐる論議についての韓国と日本の関連資料を収集し、近年展開されている論議において焦点となっていることを分析し検討した。第二に、今年度が韓国調査の本調査であったため、韓国の多文化教育について関連機関の聞き取り調査を行った。2006年以降に政策や法制などにおいて大きな動きを見せている韓国の多文化教育の実態を「官」と「民」の両方から調査し、韓国の多文化教育に対する重層的な視点を持ち調べることができた。今年度の調査に基づき来年度は日本の多文化教育の総合的理解のための調査に取組む予定である。
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