本研究は、地域社会教育における多文化共生支援システムの実態と課題を明確にし、多文化共生教育のあり方と可能性を日本と韓国を調査対象に検討することを目的とする。本年度は引き続き韓国調査と日本調査を文献調査とフィールドワークを並行して行った。 まず、日本では、本名などオールドカマーの子どもたちが抱えていた問題がニューカマーの子どもたちにも見られることが川崎市などのフィールドワークから明らかにされ、そのような問題の再生産構造が厳存している中で、多文化共生を1970年代以降の民族差別撤廃運動や民族教育実践の中から形成された「実践的概念」として捉えることと、こういった多文化共生を実現していくためには制度化していくことが大事であることを確認した。 一方、韓国では2009年度から始まった小学校教員養成大学における多文化教育課程開設など教育人的資源部の政策を調べるとともに、地域社会で活動しているNGOなどを調査、2006年以降5年目を迎えている多文化教育の多様な実践が調べることができた。 以上、1970年代からの市民運動によって自治体の政策が進展し、在日韓国・朝鮮人を対象とした実践の上にニューカマー外国人への対応・支援に取組んでいる日本と、中央政府から多文化共生政策がつくられている韓国と、多文化共生に向けてのアプローチの違いを明らかにしながら、このような違いや、多文化教育の形成における歴史的・社会的背景の違いがあるとしても、韓国の多文化教育をモデルに日本の多文化共生の政策の枠組みを考えるという多文化共生への相互補完的視点を導き出すことができた。
|