研究概要 |
本研究では,わが国企業を対象に,(1)内部資本市場の効率性,(2)資本構成と内部資本市場,(3)研究開発型企業と内部資本市場という3つの研究課題を明らかにすることを目的としている.平成20年度の計画では,これらの研究課題を研究するためのリサーチデザインの確立と内部資本市場関連データの構築を主に行った.具体的には,関連する先行研究のサーベイから得られた示唆を基に,購入したセグメント・データベースに含まれている変数から内部資本市場の効率性や,内部資本市場に影響を及ぼし得る変数を作成した.また,購入した企業情報基本ファイルから,コーポレート・ガバナンスに関する変数を作成した.データの構築,分析は購入したSASを用いて行っている.セグメントデータは,一つの企業に複数のセグメントが存在するため,企業毎の内部資本市場の効率性指標をどう作成するかが問題となるが,セグメントの投資額と投資機会との共分散をベースとした指標を用いて分析を進めている.また,平成20年度の計画では内部資本市場の効率性に関する検証も計画通り行った.米国を対象とした先行研究では,投資資金で加重平均した各セグメントの投資機会分散度が大きくなる程,内部資本市場の効率性が低下することが示されており,多角化ディスカウントの有力な説明要因となっている.本研究においても,この研究課題に取り組んだ結果,日本企業においても同様の傾向が確認された.この結果は,事業部門レベルのエージェンシー問題の解決のために,内部資本市場が使われている可能性を示唆している.
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