双務契約において両当事者の責めに帰すべき事由により債務者の債務の履行が不能となった場合の法的処理について、ドイツ法の検討から、以下の点が明らかとなった。第1に、両当事者の責任割合を精確に法的効果に反映させるためには、債務者の反対給付請求権を存続させるか、あるいは、それを脱落させたうえで、債務者の債権者に対する損害賠償請求権を認める必要がある。第2に、債務者の反対給付請求権を存続させる場合には、それを脱落させる効果をもつ債権者救済手段(解除など)の要件または効果を制限する必要がある。第3に、債務者の損害賠償請求権を認める場合には、債権者にいかなる債務不履行があるといえるのかを検討しなければならない。第4に、これらの法的効果を考慮するうえでとくに重要な視点は、給付と反対給付との間の価値関係を尊重すること、両当事者の責任割合を効果に精確に反映すること、反対給付が金銭でない場合の特殊性を考慮することの3つである。
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