本研究は、男性家族介護者に対する他者介在、とりわけ介護環境の改善に向けたキーサポーターの特定をねらいに、男性家族介護者の社会的サポートシステムに関する知見の集約を図ることを目的としている。 初年度は、次年度に実施する予定の質問紙調査の作成を見据え、その準備段階として、文献レビューならびに男性家族介護者を対象とした聞き取り調査を行った。文献レビューでは、男性家族介護者の介護状況について知見の集約を図るとともに、幅広く家族介護者を対象とした社会的サポート、援助要請行動に関する整理を行った。また、聞き取り調査では、調査協力が得られた3名を対象に、介護上のサポートに対する思いについてインタビューを行った。その結果、男性家族介護者は、要介護高齢者との続柄によって異なるものの、自身の介護の担い手としての責任を強く認識しており、他方では介護に関する情報は自ら入手するなど、できる限り他者への援助要請を最小限に止め、介護上の諸問題を解決しようとする傾向が伺えた。このことから、男性家族介護者への援助を行う上では、単にインフォーマル・サポートのみならず、フォーマル・サポートを適切に取り込みながら他者を介在させていくことの重要性が示唆された。このように、初年度では、従来の研究知見の集約と男性家族介護者の介護状況に関する現状の整理を行った。こうした実績は、男性家族介護者の社会的サポートに関する研究を行う上で十分に意義のあるものであったと判断される。現在、次年度実施予定の質問紙調査の精査を行いつつ、調査協力依頼等、調査にあたっての準備体制を整えているところである。
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