平成21年度は、前年度の研究成果(文献レビュー、インタビュー調査)を基礎に、家族介護者の社会的サポートシステムに関する調査票を作成し、調査(郵送法)を実施した。具体的には、某県(3県)内に設置されている訪問看護事業所(訪問看護ステーション)の協力を得て、在宅で高齢者を介護している家族を対象に調査票を配布した。調査にあたっては、研究目的、倫理的配慮等について十分配慮し、調査への同意が得られた場合にのみ協力を依頼した。 主な研究成果は以下の通りである。まず、男性家族介護者の社会的サポートネットワークは女性家族介護者と比較して全体的に小さく、とくに「日常的な介護の手伝い(手段的サポート)」と「心配事や悩みごとを聞いてくれる(情緒的サポート)」の2つのサポート項目では、女性よりも男性のほうが有意にネットワークサイズが小さくなっていた。また、男性家族介護者の社会的サーポートネットワークの供給と代替性(階層的補完関係)に関する検討を試みたところ、「介護や福祉サービスの情報提供(情報的サポート)」は配偶者との関係の有無により、それ以外のサポート項目は配偶者に加えて同居家族(親族)との関係の有無により、ネットワークサイズが変化する(援助者が不在の場合にネットワークサイズが小さくなる)ことが明らかとなった。これらの結果は、男性家族介護者の社会的サポートシステムの実態を把握する上で一定の示唆を与える知見であり、一方では介護・福祉等の専門職者による見守りネットワークの拡充と男性家族介護者のための援助要請システムの構築が必要であることを示唆するものである。 なお、これらの研究成果は研究成果報告書として取りまとめた。
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