2008年8月に東北6県に赴き、「高度経済成長期」に生活改良普及員を経験した方々に会い、当時それぞれの地域の労働・生活状況および共同炊事や共同作業といった、労働・生活を共同化する動きについて聞き取り調査を行う。残存資料の多様性や調査の容易さ等の理由から、山形県を調査地とする。2008年12月、山形県立図書館にて山形県の地域史、農業改良普及誌のバックナンバー、当該期の農業従事者割合等統計データや農繁期託児所に関する資料の収集を行った。 2009年3月、東北でも有数の農業地域である山形県庄内地方、具体的には鶴岡市において「高度経済成長期」前半における農繁期託児所および当該期における農村生活の聞き取り調査を行った。農繁期託児所の開設経緯や農繁期託児所が子どもたちにどのような教育(あるいはしつけ)をおこなったのか、託児所主催者に具体的に聞いていった。子どもを託児所に通わせた地域の人々に対しては、農繁期託児所に通うことで、子どもたちにどのような変化がみられたのか、あるいは託児所は家事労働の軽減にどうような役割を果たしたのか、等について尋ねた。さらに、農村女性に対しては、当時の農村での子育ての様子や特に農繁期における女性の労働状況について詳しくインタヴューを行った。 当該期の山形県庄内平野において、農繁期託児所が子どもに衛生観念や「標準語」を教えることを通して、農村生活をいかに「合理化」していったのか、その過程についてデータから実証し論文にまとめた。
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