本年度の前半は、前年度山形県鶴岡市で収集した、農繁期託児所に関するデータを分析しながら、論文としてまとめるために必要な理論的枠組みを作り上げていった。具体的には、アメリカでの協同家事に関する文献や社会と家族との関係性を理論化した文献を参照しながら、子育てという家事労働を共同で行う意味について理論的位置づけを行った。この研究成果を9月に第61回日本教育社会学会において発表した。 本年度の後半は、まずアメリカ女性史や家政学史が蓄積してきた、アメリカにおける家政学の誕生に関する文献を収集・読解し、家政学がどのような経緯で、どのような思想的根拠をもって成立し、その後具体的実践として進展していったのかをその社会的背景とともに読み解いていった。次に1900年代以降の大学や中等教育機関での家政学教育や生活改良普及事業等の展開に関する法がどのように制定され、現場で生活の「改善」に関する働きかけがおこなわれていったのか、分析した。最後に農繁期託児所において教育の対象となった子どもの生活世界を理解するために、子どもに関する理論書や「遊び」、食事(おやつなど)等子どもの生活を分析した実証的研究を精読した。これらの作業を通して、戦後日本の農村における子どもたちがどのように自らの時間および空間を統御しようとし、それに対して教育はどのように介入していったのかを把握した。
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