本研究の目的は、育児に対して負担感や不安感を抱く母親に対し、幼稚園が提供しうる効果的な子育て支援のあり方について検証することである。従来の研究において、十分に検証されてこなかった子育て支援の効果を検証するにあたり、本研究では、年度開始時と終了時の二度にわたる縦断的な質問紙調査から、幼稚園児を持つ母親の育児感情の変化をとらえ、これを支援の効果の指標とする。本年度は、まず、これまでの先行研究にて得られた知見をベースに母親の育児感情を体系的に整理し、かつ、その要因検討を行い、得られた結果を発達心理学研究にて発表した。また、本研究のパイロット的な調査として行った幼稚園前後における母親の育児感情の変化についてまとめ、家庭教育研究所紀要にて発表した。入園前後の二度にわたる検証の結果、第1子群と第2子群とで育児感情の変化に違いがみられたこと、また、弟妹がいるかどうかによって差があることなどが明らかとなった。このことから、母親のおかれた子育て状況によって、求められる子育て支援の在り方も異なるであろうことが示唆された。こうしてまとめられた知見をもとにして、育児研究を行う他の研究者らとともに「育児研究が今後の子育て支援に貢献できる道を探る」と題し、日本発達心理学会第60回大会においてシンポジウムを企画・開催した。そこで、育児感情に関して得られたこれまでの知見が、今後の幼稚園における子育て支援研究にどのような貢献を果たせるかについて、話題提供を行った。本年度は、以上のような研究活動と並行し、2009年度に予定している調査実施の準備として、複数の幼稚園教諭並びに当該分野の専門家に対するヒアリング調査を行うとともに、調査に協力してくれる幼稚園を探し、首都圏の私立幼稚園10園からの調査協力の了承を得た。さらに、本年度中に発表した知見や先行研究をもとに質問紙の項目選定・作成を行った。
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