研究概要 |
本研究は、幼稚園において実施されている子育て支援の効果について、母親が抱く育児への負担感や不安感、肯定感の変化を指標に検証することを目的としている。平成21年度は、首都圏にある10園の幼稚園に協力を求め、幼稚園児を持つ母親を対象に2度にわたる縦断的な質問紙調査を実施した。第1次調査は平成21年7月に行い、1,280名の母親から回答を得た。質問内容は、母親の育児感情と幼稚園の子育て支援の利用の実態のほか、周囲からのサポートの有無、子どもの問題行動、母親の自尊感情等についてである。先行研究との比較の結果、友人との交流や趣味など、母親が自分自身の時間をつくるために、幼稚園の預かり保育を利用している割合が高まっていることや、預かり保育の利用理由の違いによって、育児への負担感に差があることがわかった。つまり、預かり保育等の子育て支援が母親にとってより身近に利用しやすいものになっていること、利用のしやすさが育児への負担感を軽減させる可能性が示唆された。第2次調査は、平成22年3月に実施した。第1次調査協力者のうち、第2次調査への協力も了承してくれた母親703名に対して郵送法による質問紙調査を実施し、472名から回答を得た。平成21年度内に幼稚園の子育て支援をどのくらい利用したか、前年度と比較して利用が増減したかどうかが、母親の育児感情の変化に影響を与えているか検証した結果、預かり保育、子育て相談の利用の頻度と母親の育児感情の変化には大きな関連が見られなかった。つまり、これらの支援だけでは、負担感や不安感を軽減するだけの十分かっ決定的な効果を持たない可能性が示唆された。母親が育児に対して負担感や不安感を抱く要因は複雑であることなどが理由の1つと考えられる。従って、どれか1つの支援だけに効果を期待し依存するのではなく、いろいろなケースに対応できるよう、支援のバリエーションを増やしていくことが重要である。
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