本研究は、今日の地域の変容を踏まえ、地域情報の担い手に着目し、インターネットを活用した地域情報生成過程の変容の一端を解明することを目的に実施したものである。先行研究においては、地域SNS等の先駆的な取り組みに焦点が当てられ、各々の特徴や参加者の動向把握が中心であったが、本研究は、「地域」を切り口として横断的に各種取り組みを扱い、地域内における新旧の地域メディアの相互関係の把握・分析を行うことを企図した。平成21年度は、前年度に実施したアンケート調査(全国の既存地域メディア800事業者を対象としたインターネット活用動向の把握)分析に加えて、地域情報の生成に関わる多様な主体(行政、事業者、住民有志等)を対象とした事例調査(熊本県天草市、新潟県佐渡市、千代田区秋葉原地域、熊本県山江村ほか)を行い、生成過程に関して質的な観点からの把握分析を実施した。 質問紙調査結果によれば、既存地域メディア(CATV、コミュニティFM、ローカル新聞等)は、ウェブサイトにおいて自社情報以外にも、地域団体とのリンク、地域行事・イベント情報等、当該地域に関わる事柄を掲載している。様々な問題点は包含するものの、インターネットの活用により「地域に住んでいる人のリアルな声が聞けるようになった」「青年層からの反応増加」「出身者に地元の情報を届けることで、ふるさとへの関心・意識が高まり、Uターン促進に貢献」「観光客や移住者の問合せ増加」等の効果が生じており、地域内においてはこれまでと異なる住民層への伝達、地域外にも地域情報が多様な形態で伝播しつつある状況が明らかになった。事例調査からは、各地域の状況は異なるものの、インターネットを活用する「担い手」には、U・Iターン者、他地域で事業を営む当該地域出身者等が積極的に参画しており、外部の視点を持った上での当該地域の活性化に対する意識そのものが活動のインセンティブになっていることが明らかになっている。
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