本研究の1年目は、第一に、各州の団体交渉法の成立過程とこれに伴う教員組合運動の史的展開に関する分析おこない、また第二に、全米各州で行われている現行の教育労働法制改革の分析を行った。 各州団体交渉法の成立過程については、その後の教員運動の展開に影響を与えたと思われる1970年までに制定されたマサチューセッツ、ミシガン、ニュー・ジャージー、ニュー・ヨーク、ウィスコンシン、コネッティカット、メリーランド、ロード・アイランド、ワシントン、カルフォルニア、ミネソタ、オレゴン各州法の分析を行った。本研究においては、これらの州法にっき、代表方式、交渉範囲、交渉行き詰まりの妥結方式、争議行為の有無等について比較分析するなかで、各州法には多様な交渉方式が採用される一方、代表方式に関しては、多くの州でアメリカ労働法の特殊な法理である「排他的代表制(exclusive representation)」が広く共通に採用されたことを明らかにしている。 近年の教育労働法制改革に関しては、公立学校教員のみを対象として、その団体交渉範囲の制限や、争議行為の制限をおこなったペンシルバニア州、イリノイ州、ロード・アイランド州の改正法に関する分析を行い、中でも当該改正法の違憲性が問われたミシガン州法の改正問題に着目し、上記の法制史との関連も含めて、その法的問題について分析した。公立学校教員を他の一般公務員に包括する形で制定された1965年のミシガン州官公雇用関係法(PERA)は、一般労働法の法理を多く採用した点に特徴を持っている。そして、この法的枠組みが教員団体の労働組合化を促すこととなり、現在の教員組合批判を背景とした法改正に連結している点を明らかにした。
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