本研究は、労働法モデルによって形成されたアメリカ独自の教員法制を分析することを目的として、以下のような研究計画にもとづいてこれを遂行した。 (1)本研究の1年目は、1960年代に制定された各州の初期教育労働法制の分析と、これに伴う教員団体の運動方式の変化を明らかにした。なお、教育労働法制の検討においては、その後の教員運動の展開に影響を与えたと思われる1970年までに制定された12の州法の分析を行った。 (2)本研究の二年目は、1990年代以降の教育労働法制の改正動向に関する分析を行った。具体的には、公立学校教員のみを対象として、その団体交渉範囲の制限や争議行為の制限をおこなった州法改正の動向を検討し、なかでもミシガン州法の改正問題をその法制史も含めて分析した。これらの分析をもとに、本研究は学校教員の専門性を支える労働条件や身分の保障を、民間労働者や一般公務員とは異なる教員に固有な法制度によって行う必要性を提起している。
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