今日の企業にとって新製品開発や新事業開発といったイノベーションへの取り組みは、生き残りをかけた死活の問題である。こうしたイノベーション能力の構築と関連して、再び組織学習が理論的にも実務的にも多くの注目を集めている。本研究は、戦略的組織学習を創発的戦略形成のプロセスとしてみなし、個人学習の組織学習への橋渡しの機能を果たすホット・グループの存在に焦点を当てている。 前年度は(平成20年度)、戦略的組織学習のフレームワークの精緻化に努めながら、戦略的組織学習におけるホット・グループの意義について理論的な検討を加えた。本年度は(平成21年度)、前年度の成果に基づき、日本の製造上場企業に対するアンケート調査を実施することで、価値創造プロセスの活性化の促進要因の究明に努めた。その結果、企業が創造的組織学習を実践し、いわば破壊的イノベーションを実現するためには、多様性の促進と異部門間コミュニケーションの有効性が認められた。また、そこには、自発的な非公式組織であるホット・グループが創発的戦略の駆動力として、イノベーションの担い手であることが検証された。
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