本研究の目的は、悪いクチコミが消費者のブランド態度にどのような影響を与えるのか、そのプロセスを解明することである。前年度の調査で、消費者のブランド態度は「感情に基づく態度」と「認知に基づく態度」の2次元に分けてとらえられることが分かった。そこで、今年度は「感情に基づく態度」と「認知に基づく態度」のどちらがより新しい情報によって影響を受けやすいのか、すなわち、悪いクチコミを参照することによってダメージを受けやすいのかを検討した。【研究方法】調査会社のパネルに登録している一般消費者を対象としたウェブ実験。【手続き】著名なパソコンブランド(5種類)に対する評価をブランド態度尺度(「感情に基づいた態度」「認知に基づいた態度」の尺度)を用いて測定した(Time1)。その3週間後、回答したいずれかのブランドに関するインターネット上の書き込みとして悪いクチコミを提示し、それを読ませた直後に、当該パソコンブランドに対してTime1と同一のブランド評価尺度に回答させた(Time2)。「感情に基づいた態度」得点と「認知に基づいた態度」得点をそれぞれTime1と2で比較し、、どれくらい得点が低下したかを検討した。【結果】悪いクチコミを参照することで、「認知に基づいた態度」は悪化しやすいが、「感情に基づく態度」は変化しないことが示された。本研究から、世間で評価の高いブランドが、たとえ悪いクチコミをされても大きなダメージを受けることなく支持を得続けることができるのは、消費者の感情に基づいたブランド構築に成功しているからであろうという結論が示された。
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