本研究は、歴史や政治、経済面などでの衝突を背景に特定の国や地域に対して民間レベルで生じる敵対感情に焦点を当て、それの消費者行動への影響について、独自の消費者行動モデルに基づきながら多地域(日本、韓国およびフランスの三ヶ国)において検証することを目的としている。 20年度はおもに、考察対象となる上記三ヶ国、特に韓国とフランスにおける定性的な情報一-二次データの収集および現地での定性的調査の実施--の収集と分析に重点をおいた。二次データではおもに、それぞれの国における諸外国への(おもにネガティブな)民間感情の現状や歴史的推移、ビジネス現場での現れ方およびメディアの取り上げ方などについて収集整理した。現地での定性的調査においては、大学の研究者、企業関係者、メディア関係者および一般消費者を対象に、外国へのネガティブな感情に関し、個人の体験を含めて、その存在と社会における反映の仕方、日常の消費態度や行動への影響について、幅広く聞き取りを行った。また、夏には現地研究者の協力を得て韓国でパイロット調査を実施し、その分析結果を10月にソウルで開催された研究学会で発表し、現地研究者と交流を行った。こうした作業は、21年度に上記三ヶ国で実施予定の質問紙調査のために極めて重要な意義を持つ。特に、各国間で微調整が必要な質問紙は、定性的考察の結果を十分に吟味する上で作成することでより質の高いデータを得ることができる。また、定性的データ自体が質問紙調査結果を検討し研究全体の成果をまとめる上で大変重要であることはいうまでもない。
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