アメリカ合衆国憲法の変動をめぐる議論は、同国における司法審査と民主主義をめぐる議論(司法審査理論あるいは憲法解釈の方法論)と密接に関連していること、そして、二元的民主政理論を主張するイエール大学のアッカーマン教授が、「正規の憲法改正条項によらざる憲法改正」によって「生ける憲法」となった1930年代のニューディールや60年代の市民権運動の成果を保護することが連邦最高裁の役割であるとする重要な指摘を最近行っていることから、二元的民主政理論における司法審査の位置付けについて、司法審査と民主主義をめぐる近時のリベラル派の議論を交えて検討し、二元的民主政理論における司法審査が日本の憲法裁判所「転轍手」論と類似していることを指摘した(東海大学総合教育センター紀要29号参照)。また、2008年11月のアメリカ出張において、アッカーマン教授に研究テーマに関するインタビューを行い、同教授の中立的対話等の法哲学分野の議論と二元的民主政理論の関連、1954年のブラウン判決と市民権運動の相互関係、1964年市民権法等の市民権保護の関連諸法令成立にL・ジョンソン大統領やR・ニクソン大統領が果たした役割について貴重なコメントをいただいた。なお、2009年3月のアメリカ出張においては、「正規の憲法改正条項によらざる憲法改正」の可能性を認めつつも、アッカーマン教授の議論の不十分さを批判するチュレーン大学のS・グリフィン教授と、アメリカ合衆国憲法の改正に関する法的・歴史的な包括的研究を行い、アッカーマン教授やA・アマー教授の議論を強く批判するミドルテネシー州立大学のJ・ヴァイル教授にそれぞれインタビューを行い、憲法解釈と憲法の変動の区別、憲法改正手続における大統領、連邦議会、連邦最高裁、人民のそれぞれの役割、連邦憲法と州憲法の改正の相互関係について両教授から重要な指摘をいただいた。
|