平成21年度は学会発表、論文公刊という形で研究成果を具体化することに力を注いだ。その成果は以下の通りである。 (1)学会発表 平成21年5月に行なわれた日本選挙学会において「参議院全国区選挙と利益団体」を発表した。この報告では、昭和30年代から50年代の参議院全国区選挙において、日本遺族会が勝ち残ることができた要因を考察した。日本遺族会にとっての「利益」、同会の組織構造・集票構造の変遷を、関係者のインタビューや数量的なデータを用いて分析した本報告は、同学会において高く評価され、平成21年度の日本選挙学会賞(優秀報告)受賞が決定している。 (2)論文公刊 学会発表の内容を一部修正したものを『選挙研究』25巻2号に発表した(「参議院全国区選挙と利益団体-日本遺族会の実証分析」)。近年の日本の利益団体研究はサーベイ中心の傾向にあり、個別の利益団体の事例研究は1950年代からほとんど進展していない。本研究はこうした現状を打破し、日本遺族会の組織の実態に初めて実証的に切り込んだ研究として位置づけられる。 現段階で公表した業績は以上の通りであるが、それ以外にも資料収集は進んでいる。21年度特に力を入れたのは、地方の公文書館における資料収集である。具体的には市町村レベルの遺族会の文書、あるいは援護行政に関する資料を多数収集し、現在分析を進めているところである。また日本遺族会関係者や元官僚に対するインタビューも精力的に行ない、これらの資料を用いた論文は平成22年度中に発表する予定である。
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