1本研究の目的と本年度の研究実績 本研究は、日本植民地期の台湾を事例に帝国日本による植民地化の実態を経済面に着目して検討することを目的とした。そして植民地期台湾の対外的な流通経路の変化を台湾総督府の役割や流通の担い手に着目して実証的に考察した。具体的に本年度は、下記に示したように台湾米の移出過程について分析し、植民地期台湾の経済的な特質である貿易依存度の高さが、いかなる過程を経て進展したのか、あるいはその流通過程を担った商人・企業が台湾の植民地化にいかなる役割を果たしたのかを考察した。 2研究実施計画と本年度の研究実績 本研究に関わる本年度の研究実績・活動は以下の通りである。日本植民地研究会編『日本植民地研究の現状と課題』(アテネ社)に植民地期台湾の研究動向をサーベイした「台湾」が掲載された(6月)。近年の研究を整理しつつ、本研究を研究史上に位置づけた。政治経済学・経済史学会において「戦間期における台湾米移出過程と台湾総督府の流通政策」を報告した(10月)。本報告では、近代日本と植民地台湾の間の流通過程のあり方を考察し、商品供給量を規定する政府の働きやこれに対応する経済主体の活動を台湾米移出過程を事例に考察した。資料の収集を目的として函館市立中央図書館(12月、北洋漁業関係資料)、国史館台湾文献館・国立中央図書館台湾分館(12月・2月、台湾総督府公文類纂・植民地期台湾における刊行物)、九州大学附属図書館(1月、農業関係刊行物)に出張した。
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