研究の初年度にあたる平成20年度は、開始直後に研究代表者の異動があり、研究のスタートアップにやや遅れが見られたが、全体としては特に資料収集等の面でかなりの成果があった。 今年度の研究は、文献資料の面では、(1)日中関係に関する先行研究の整理、(2)日中関係に関する文字資料の分析とその初歩的成果の発表、(3)アジア冷戦に関する先行研究の整理、(4)オーラル・ヒストリー収集に向けた技法の検討、(5)国内/国際要因のリンケージに関する方法論の検討、の5点が予定されていた。このうち比較的順調に進んだのが(1)(2)(3)であった。特に1970年代〜1980年代の日中関係については、日中経済協会に当時の両国間の経済視察団等に関する資料が比較的まとまって残されていることが判明し、今後の重要な手がかりを得た。また当時の中国側の国際情勢認識にはやや不明な点があったが、東洋文庫が最近収集した中国共産党の内部資料に貴重な情報が含まれていることがわかった。作業が最も遅れている(5)については、平成21年度に重点的に進めることとしたい。 今年度はまた、聞き取り調査にも着手したが、その成果はややアンビバレントであった。結論から言えば、中国での調査がかなり難航している。1980年代の政策決定を明らかにすることについて、中国側は研究代表者が当初考えていたよりずっとナーバスである。そのため今後は、(1)中国で良い研究協力者を探す、(2)中国から海外に亡命した元中国共産党幹部にアプローチする、などの対応策が求められる。他方、日本国内の関係者への聞き取り作業がやや遅れている。今年度はこれを積極的に進め、その成果を公開していくこととしたい。これによって長期的には、中国側の情報開示への積極姿勢を促す効果も期待できる。
|