本研究の当初の目的は、1980年代から1990年代にかけて、日中関係が国際関係の影響を受けながらどのように変質したかを分析することであった。しかしながら研究遂行の過程では、1980年代の「日中友好」関係がどのように形成されたかをまず明らかにする必要が生じた。そのため本研究は、1970年代に日中貿易の実務に携わっていた日本側の人々に重点的に聞き取りを行い、それを中国側が最近公開した資料と対照し、特に経済協力の観点から中国の改革開放初期の日中関係の構築プロセスを検討した。その結果、日本の積極的な対中協力姿勢が1978年における〓小平の指導権掌握に大きな影響を与えたことが明らかとなった。おそらくこれを契機として、中国では日中関係が国内政治の動向に深く組み込まれることになったと推測される。
|