研究概要 |
平成21年度は,前年度において精査した認知行動療法プログラムの効果を実験的に検討した。 [方法] 対象者:DSM-IV-TR(American Psychiatric Association, 2000)による特定の恐怖症の診断基準を満たす歯科治療恐怖患者7名(男性1名,女性6名[平均年齢36.29(中央値31),SD=10.67])を対象とした。 研究デザイン:オープントライアルにて行った。 調査材料:初診時およびプログラム終了時に,歯科治療中の恐怖感についてSubjective Units of Disturbance(SUD : 0~100)によって評定を求めた。 [結果] 脱落者数は1名であり,平均セッション数は4.83(中央値5,SD=0.75)であった。初診時におけるSUDの平均値は81.67(中央値80,SD=8.17)であり,プログラム終了時におけるSUDの平均値は22.50(中央値25,SD=10.84)であった。プログラムの効果を明らかにするために,初診時とセッション終了時におけるSUDについて符号付き順位検定を行った結果,有意差が認められた(T=2.21,p<0.05)。また,初診時とセッション終了時におけるSUDの差の大きさを確認するため,効果サイズ(r)を算出した結果,高い効果サイズが認められた(r=0.91)。したがって,本研究によって開発された認知行動療法プログラムは,歯科治療中の恐怖感を大きく緩和できることが明らかにされ,欧米において実証されてきた認知行動モデルがわが国においても妥当であることが示された。
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