今年度は、以下の課題に取り組んだ。 1)カナダ・オンタリオ州における批判的リテラシー教育の実践展開とその社会的背景の分析 同州における批判的リテラシー教育の導入プロセスについて、現地での資料収集とその言説分析、インタビュー調査を行った。現地調査では、オンタリオ州教育省Literacy and Numeracy Secretariatプロジェクトの担当者への聞き取り、および小学校6校の訪問と授業者へのインタビューを行った。政策、実践ともに社会的公正の追求という文脈の中でリテラシー教育が位置づけられていることが明らかになった。 2)オーストラリア-カナダにおける批判的リテラシー教育の比較検討と「公正で質の高いリテラシー教育」のモデル化 現地調査および文献資料の分析から、両国のリテラシー教育の政策と実践、それを成立させている政治構造の比較検討を行い、「公正で質の高いリテラシー教育」を成立させる諸要因を検討した。教師の高い専門性へのサポートと自律性の保障、および大綱的なカリキュラムという要因が、公正と質を追求するリテラシー教育の成立要因であることが明らかになった。
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