本年度は学習成果(態度得点)の高い教師を対象に、彼らの戦略的思考の内実を検討することを中心に研究を進めた。具体的には、次の2点を基軸に進めた。 (1)優れた教師は、戦略的思考を発揮するために豊富な実践的知識を有していることが予想されることから、学習成果の高い教師を対象に授業設計段階における知識の実体について検討した。すなわち、「ゲーム理論」における「展開型」の表現様式を援用して授業設計段階における教師の知識について分析した。その結果、学者成果(態度得点)の高い教師は、運動教材に向かう「子どもの予想されるつまずきとその対処法」に関する知識が豊富で類型化されていることが明らかになった。(佛教大学教育学部論集第20号) (2)学習成果(態度得点)の高い4名の教師を対象に、彼らの授業実践を収録・集音し戦略的思考の発揮の実体について検討した。戦略的思考の6つの観点(インセンティブ、シグナリング、コミットメント、スクリーニング、ロック・イン、モニタリング)を明確にする分析法を独自に考案し、分析を試みた。その結果、4名の教師に共通してコミットメントとモニタリングの教授戦略が認められた。加えて3名の教師からはロック・イン戦略の発揮が確認され、さらに2名の教師からインセンティブとシグナリング戦略の発揮が確認された。6つの教授戦略の全てを発揮していたのは1名だけであった。こうした、戦略的思考の発揮には、運動教材に対するバイオメカニクス的・生理学的知識や学習指導法の知識、子どものとらえ方等が影響しているものと考えられた。(現在、投稿論文執筆中).
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