1. 価格粘着性と国内間の一物一価乖離との関連性 日本の価格データを用いて、価格の緩やかな変動(価格粘着性)が一物一価法則を妨げているかどうかを検証した。検証の結果、価格粘着性は一物一価法則を極めて大きく妨げていることがわかり、価格粘着性を考慮することの重要性を発見した。研究成果は"The law of one price without the border: the role of distance and sticky prices"という論文としてまとめられ、現在国際雑誌に投稿中。 2. 国際間の一物一価乖離における情報の粘着性の役割 米国・カナダの都市間の一物一価乖離について、価格粘着性をコントロールしたうえで企業の保有する情報の遅れ(情報粘着性)によって、どの程度一物一価法則の妨げているのかを検証した。実証分析では、企業が約10-12か月の情報の遅れを伴って価格を決定しているとき、一物一価の乖離の変動を説明できることが分かった。研究成果は"Accounting for persistence and volatility of good-level real exchange rates: the role of sticky information"として公表され、現在、国際雑誌に再投稿中。 3. 新しいメニューコストモデルの構築 価格粘着性のより精緻な理論であるメニューコストモデルの改良・分析を行っている。分析の結果、企業の生産技術にばらつきがあるとき、右下がりハザード関数という個別価格変動の典型的な特性をうまく説明できることがわかっている。現在、論文の執筆段階。
|