本研究は、1990年代以降のロシアの社会変動と意識・階層の変化について、これまで実施されてきた調査を、包括的に捉える試みである。第1の成果は、過去に報告者が実施した2000年、2004年ウラジオストク量的調査(ロシア・極東国立総合大学で実施。内容は主に職業威信調査・働くことに関する意識調査)の結果を総括するための論文を執筆・発表し、さらにこれまでのデータを活用するため、第3回目の継続調査を実施した。第2には、報告者がウラジオストクで実施した質的調査(ソ連崩壊後に急速に増加するプロテスタント団体のひとつである福音教会「生ける信仰」で行った牧師や信者に対するインタビュー、日曜学校や教会が取り組んでいる社会活動(麻薬中毒者に対するプログラム)の調査)の分析と解釈を行い、その成果を『ロシア-祈りの大地』として出版した。第3には、既存の社会調査の整理・再分析の一環として、東欧・ソ連の体制転換期にあたる1992-93年と96年にアメリカの社会学者M.Kohnらがウクライナで実施したパネル調査の再分析を試みた。
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