生鮮品のサプライチェーンに関する研究においては、大規模小売店の拡大とその影響力が大きな注目を集めている。現在の生鮮サプライチェーンの実態として、この小売段階の変化を要因として大きな変革が生じつつあることが指摘されている。しかしながら、小売段階を分析対象とする研究は、生産段階・卸売段階に比べ理論的・実証的な取り組みがきわめて少ないのが実情である。それは、生産段階、卸売段階においては、生鮮品の国民への安定的供給を目指して整えられた各種制度(野菜供給安定法や卸売市場法など)がその内部での取引関係の情報を公的に明確化することを促している一方、小売段階はそれらによる影響が少なく、公的に明確にされていない点が多々存在するからである。 本研究では、小売段階に焦点を当て、彼らによって(1)生鮮サプライチェーンにいかなる変革をもたらしており、(2)その変革をもたらす要因はどのようなものであり、(3)生鮮サプライチェーンの変革が生産段階、卸売段階ならびに消費者にいかなる経済的影響をもたらすのかについて理論的・実証的な分析を行うことを課題とする。 本年度においては、(1)文献サーヴェイ、(2)各種統計資料、(3)生鮮サプライチェーン関係者へのインタヴューをもとに、生鮮サプライチェーンの変革の実態と、変革をもたらす要因について理論的仮説を構築した。その結果、(1)小売は卸売段階に対し、より確実・安定的な生鮮品の調達を要求しており、(2)かつ特性の異なる多種多様な商品の品揃えや鮮度維持を求めている。(3)それは卸売・小売段階にとどまらず、サプライチェーン全般おいてスポット的取引からより長期契約的な取引関係へと取引関係を大きくシフトさせており、さらに卸売段階の淘汰をもたらしていることが明らかとなった。
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