平成20年度は、研究実施計画に基づき、「リバウンド効果に関する先行研究の整理」から始め、近年の研究を中心に部門ごとに結果をまとめた。さらに、「各部門におけるリバウンド効果の推定」では、これまで日本で実証研究がなかった運輸部門(乗用車)を対象に、マイクロデータ(2059個)を用いてリバウンド効果の推定を行った。結果として、乗用車のリバウンド効果は約22%と、アメリカでの研究結果とほぼ等しい値となった。つまり、燃費の良い乗用車に乗り換えると、本来削減が予想されるガソリン消費量のうち約20%分はリバウンドとして、削減されないという結果である。ただし、ハイブリッド車など減税対象となるような高い省エネ性能を持つ車を使用するグループでは、リバウンド効果の大きさは統計的にはゼロとなるという結果が得られた。この結果の一つの解釈としては、いわゆる“環境意識"の高いドライバーは、リバウンド効果まで意識して車を使用している可能性がある。これらの結果より、リバウンド効果の大きさの把握と、その緩和効果についてある一定の結果を示すことができた。また、この研究は7月にスウェーデンで開催されたEAEREの年次大会で報告をする機会を与えられた。平成21年度に入り、燃費効率の高い車に対する減税強化、太陽光パネル設置補助の強化政策の実施、省エネルギー家電購入促進のためのエコポイント制の導入計画など、さまざまな省エネルギー対策が計画・実施されてきており、今後この動きはますます強まると予想される。本研究では、リバウンド効果は、ほぼどの部門でも発生していることが示されたため、その対策策を考えることが急務であるといえる。
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