研究課題
平成20年度は、ワークフェアという貧困削減政策についての理論分析に従事した。途上国・先進国を問わず、政策担当者が貧困者を救済する際に問題となるのが、貧困者の特定である。所得を観測して低所得者を貧困者と定める場合に政策担当者は怠惰な高生産者を排除できないのである。これは、政策担当者と労働者各人の間に生産性に対する情報の非対称性が存在することから起こりうる問題である。すなわち、高い生産性を有しているある個人が、労働時間を削減して低生産性者と偽り、政府からの現金給付に依存したとしても、政策担当者は彼らの能力を観測することが出来ず彼らを給付対象から除外することが出来ないためその貧困削減政策は費用削減的でなくなる。この問題の解決方法としてよく挙げられるのが、現物給付であったり、ワークフェアであったりする。ワークフェアは、政府からの現金給付を受け取る際に公共部門での労働を強制するもので、機会費用が大きい高生産者によっては魅力的な政策ではなくなる。従って、彼らに自主的に参加を辞退させることによって、政策担当者が本来援助を必要としているものを的確に把握できるようになる。このワークフェアシステムは既に各国で採用されているが、その特徴は国ごとに違う。教育重視であるヨーロッパ的なものから、費用削減的なアメリカ的なものまで幅広い。ミラノ大学で収集した資料も参考にしながら、望ましいワークフェアのあり方を理論モデルを用いて提示し論文発表を行った。
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Fukuoka university review of economics vol. 53, no. 1, 2
ページ: 17-40