本年度は日本語での研究を中心にしながら、英語の関連資料収集に努めた。丁度、重大な国際犯罪の優先順位と選択の基準という検察官の裁量に関する国際セミナーがノルウェーにある国際平和研究所(PRIO)の主催で2008年9月28日に行われたので、傍聴した。若干の国内の検察、国際刑事裁判所の検察、アドホック(臨時の)国際刑事法廷の検察、カンボジア特別法廷の検察業務について、重大な国際犯罪の捜査・訴追の選別・優先基準の個別説明がなされ、貴重な研究視座を得ることとなった。このセミナーを踏まえて、我が国、日本の検察官の裁量権行使についても研究し、国際刑事司法の検察官の裁量権行使と比較検討することが望ましいと考えるに至り、資料収集・文献整理を行い、日本の検察の裁量権行使の問題と国際刑事裁判所の検察局の裁量権行使の問題とを検討した日本語論文を研究代表者所属機関の紀要(九州国際大学法学論集)に寄稿した。英語での研究は、本研究課題である国際刑事司法の検察官の裁量の問題について、新たに国際刑事法の分断化と多様化という観点から研究を進めてきた。年度末には、九州国際法学会と嶺南国際法学会の第12回合同例会において、九州国際法学会の代表として「Impartiality and Prosecutorial Discretion in International Criminal Justice」という題目で国際刑事司法における検察官の裁量の問題について公平性という視点からの考察を英語報告する機会を得た。
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