本研究では、静脈産業、とりわけ自動車解体業の生産の実態を明らかにし、自動車解体業へのマテリアルフローコスト会計(以下、MFCAという)の実行可能性と、その意義を考えることを目的としている。 研究の結果、自動車解体業の生産の実態が明らかとなった。また、MFCAの原価計算としての特徴とは、生産プロセスからのアウトプットを、「正の製品」と「負の製品」として考える点にある。その点、自動車解体業においても、生産プロセスにて「正の製品」および「負の製品」がアウトプットされるため、自動車解体業へMFCAを適用することは可能なことが明らかとなった。 さらに、産業という枠組みにおいてある製品が生産されると仮定し、そこでの生産プロセスを考えた場合に、MFCAを静脈産業に適用する意義を検討した。その結果、産業全体としての「負の製品」が静脈産業においてアウトプットされる「負の製品」として現すことができる。この「負の製品」を物量情報だけでなく金額情報をも示すようにすることで、資源循環型社会を支える静脈産業が、「正の製品」のアウトプットによって、産業全体の「負の製品」の削減に貢献していることを、わかりやすく示すことができる。つまり、静脈産業の社会的貢献を示すとともに、彼らの社会的評価が高められることを可能とすると考えられる。
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